映画『恋のしずく』

酒蔵を舞台にした映画『恋のしずく』を試写で見た。『ラーメン侍』の瀬木直貴監督の新作だ。川栄李奈の初めての主演作だが、実に真っ当な「日本酒映画」だった。日本酒好きは必見だと思う。日本酒造りや、酒蔵を取り巻く問題が、丁寧に描かれていて、今の日本酒の全体像のようなものが、よくわかるのである。

ワイン留学を目指す女子大生が、農大の実習で広島県東広島市西条の酒蔵に行かされることになる。だが、彼女はワイナリーでの実習を希望しており、しかも、日本酒嫌いだった。この女子大生を演じているのが川栄である。実習先の酒蔵で女子大生が出会うのは、病気の蔵元(大杉漣)と、酒蔵を継ぐのを嫌がって別の仕事をしている息子、頑固な杜氏など。いかにも典型的な人物像だし、蔵元が世を去り、息子が酒蔵を継ぐ決心をするところなど、ありがちだが、現在の日本の多くの小さな酒蔵もまた、こんな感じなのだろう。

女子大生は美味しい日本酒(おそらくフルーティーですっきりとした白ワインのような吟醸酒。架空の酒蔵の酒だが、金光酒蔵が商品化したらしい。やはりすっきり系の純米吟醸だろうか)に出会って日本酒へのイメージが変わり、日本酒が好きになっていく。この展開も予想通りだ。女子大生を巡る人々の恋愛模様もあって、青春映画でもある。

それらの話は気持ちがよいほど想像通りに進み、それなりに楽しい。川栄もごく普通の女子大生を生き生きと演じている。だが、日本酒好きにとって嬉しいのは、洗米から蒸米、製麹、酒母造り、山おろしと、日本酒造りの過程がきっちりと描かれていることである。「平行複発酵」というような言葉が出て来る映画は、なかなかないと思う(『おかえり、ブルゴーニュへ』も「除梗」という言葉が出て来る珍しい映画だったが)。

映画に出て来る酒蔵は、おそらく賀茂鶴酒造だろう。セットではなく、実際の酒蔵で撮影しているし、西条の街並みも、美酒鍋も、「酒まつり」の様子も出てきて、西条のご当地映画としても魅力的である。この映画を見て、私は今年の夏休み(といっても9月の終わりごろだが)は西条へ行くことにした。

大杉漣は死ぬ役だが、本当に亡くなってしまい、これが遺作となった。途中で死ぬので出番は少ないが、昔ながらの蔵元をしみじみと演じていて、印象に残った。

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