昔、日本酒には名前がなかった

私が子供の頃、日本酒には名前がありませんでした。

父親とよく行った一杯飲み屋や、立ち飲みの串カツ屋などには、「日本酒」は「特級」「1級」「2級」の3種類だけ。酒は冷や(常温)もあったけれど、ほとんどが燗だった。名前も、どの土地の酒かも、何も書いてはいなかった。そんなものだと思っていました。

ところが大学生くらいになると、「越乃寒梅」など、日本酒に名前が付くようになって、その頃は、何でも新潟の淡麗辛口がよい、という風潮でした。酒もギンギンに冷やすようになって、燗酒というのは珍しくなってしまった。

そして今、日本酒には名前があって、燗も冷やも、冷酒もある。私の人生の中では、最も様々な日本酒があり、様々な飲み方があり、様々に美味しいという時代になりました。私の人生の中でもそうなのですが、日本の歴史、つまりは人類史上でも、同じことが言えると思います。日本酒は今が人類史上で一番美味しい時代となった。名前がなかった頃から、ほんの数十年で。

私は酒について知ったところでどうなるわけでもない、酒はただ飲めばよい、と思っていたのですが、仕事で日本酒について書かなければいけなくなって、日本で現在、出版されている日本酒に関する新書を十数冊、読みました。そうすると、読んだだけなのに、日本酒の好みが変わってしまいました。それまでは新潟県の青木酒造の「雪男辛口」が最も好きだったのですが、濃醇な熟酒や醇酒も好きになったのです。

知識で味の好みが変わるというのは、思いもよらなかったことで、ショックでした。日々、日本酒を飲み続けていることに変わりはないのですが、もっと日本酒を美味しく味わうために、日本酒について知りたいと思うようになりました。そうでないと、もったいないからです。このブログでは、日本酒について勉強していく過程を、正直に綴っていきたいと思っています。

人類史上、最も日本酒が美味しい時代に生まれた幸せを存分に味わいたい、と願っています。

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