三井記念美術館「仏像の姿(かたち)」

三井記念美術館で「仏像の姿(かたち)~微笑む・飾る・踊る~」を見た。

1917年、マルセル・デュシャンは便器に「泉」というタイトルを付けて展覧会に出品した。そのとたん、ただの既製品の便器は「20世紀を代表する前衛芸術」となった。美術館に展示されれば、すべては美術品となる。信仰の対象だったはずの仏像も、展覧会では美術品や文化財として鑑賞されてしまう。今回の展覧会は、タイトルで「姿」という漢字を、わざわざ「かたち」と読ませている。仏像を文化財として見るフェーズを変えて、「フィギュア」として楽しもうというのが趣旨なのだろう。

フィギュアとして見た仏像は、笑っていたり怒っていたり、踊っていたり片足立ちだったり、表情も身体の動きも様々で、見ていてとても楽しい。薬師如来立像のすっくとした立ち姿はかっこいいし、不動明王の憤怒の表情は怖い。腰を少しひねって微妙なカーヴをつけて立つ仏たちは、そのスタイルが実に優雅だ。古代ギリシャ・ローマやルネサンスのコントラポストもかっこいいが、このS字カーヴも負けていない。身に付けた装飾品なども、とてもセンスがいい。

最後のコーナーでは、東京芸術大学保存修復彫刻研究室による模刻作品や修復作品が展示されていて、これも面白かった。昔の仏像を、当時の色で再現している。興福寺の天燈鬼・龍燈鬼立像の復元など、鮮やかなカラーがとてもフィギュアっぽい。現在の天燈鬼・龍燈鬼は色が薄くなって風格が出ているが、ギンギンの原色を塗られた鬼たちは、ユーモラスでかわいい雰囲気だ。

バロックを代表するレンブラントの名作「夜警」が昼間の風景だったというのは有名な話だ。表面に塗ったニスが黒ずんで夜だと勘違いされていたのである。仏像たちの風格や品格も、実は時を経て劣化することによって生まれたもので、造られた当時は今のフィギュアに近い感覚で見られていたのかもしれない。

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