大七純米生酛冷やおろし

残暑が厳しいが、季節はもう秋である。柏の高島屋に、ひやおろしがたくさん並んでいた。その中から、福島県二本松市・大七酒造の「大七純米生酛冷やおろし」を選んだ。

製造年月日は2018年9月。精米歩合は69%だが、扁平精米である。扁平精米は齋藤富男氏らが提唱した精米法で、米を細長く削ることによって、削るべきところをきちんと削り、デンプン部分が無駄に削られるのを防ぐというもの。つまり、同じ69%でも、扁平精米だともっと低い精米歩合と同じ美味しさが期待できるのである。アルコール分は15%。ひやおろしなので生詰。火入れは1回なのである程度の新鮮さもあるはずだ。

唎酒をやってみる。まず色を見る。透明にしか思えないが、やや青みがかっている気もする。これは「青冴え」というものなのか。粘性もある。香りは、仄かにヨーグルトのような感じと、かすかに枯葉のような感じ。甘味は抑え気味。まろやかな口当たりで、ジューシー。力強い酸味。この酸味は、生酛の力強さなのか、生詰のフレッシュ感なのか。後味に土のような苦み。この苦みは悪い意味ではない。米の旨味も含んだ苦みだ。かなり余韻が残る。

さて、これで正解なのかは分からない。インターネットで同じ酒の去年や一昨年の紹介文を読んでみる。「洗練された香りと、複雑な旨味が絡み合う奥深い旨味があり、寒さが深まるとともにぐっと旨味を増していきます」などと、「旨味」という言葉が無駄に何度も使われている。日本語としては疑問が残る書き方だ。複雑な旨味というのは分かる。「しっとりと深みのある余韻」というのも、「しっとり」というより「ジワーっ」という感じだが、まあ理解できる。しかし、分からなかったのが、去年や一昨年のこの酒に「キレがいい」という表現を使っている人が、意外にいることである。

「キレ」とは一体、何なのだろうか。普通に考えると、スパッと切れるの「キレ」なので、余韻が少ない、後味が残らないという意味だとしか思えない。スーッと後味がなくなっているような感じである。ところが、大七の純米生酛は、余韻が残る。スパッと切れるどころか、ジワーっと残っているのだが、これがなぜ、「キレがいい」と表現されるのか、分からない。今年の酒だけ違うのだろうか。それとも、「キレがいい」という言葉が、間違って使われているのだろうか。「キレ」とは何か。分からないのに、今まで使っていた気がする。

唎酒の難しさは、酒の味が分かるかどうか、ではない。今、自分が感じている味や香りが、一般的に(というより、日本酒業界で)どのように表現されているのか(どう表現するのが正解とされているのか)が、よく分からないところだ。しかも、醸造年によって味も香りも変わってくるので、これまでの他人の唎酒が判断基準にならない。

一緒に食べたのは、ハーブ鶏ローストチキンパスタサラダ、銀鱈西京焼き、もずく。〆に「おこわ米八」の赤飯、栗、五目の三色おこわ。別に酒に合わせたわけではない。酸味が強いので、味がしっかりとした西京焼きにはよく合った。

 

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