映画『おかえり、ブルゴーニュへ』

最近、ワインと日本酒についての2本の映画を見た。ワインは「おかえり、ブルゴーニュへ」。「猫が行方不明」のセドリック・クラビッシュ監督の新作だ。日本酒は、瀬木直貴監督、川栄李奈主演の「恋のしずく」。「おかえり、ブルゴーニュへ」はタイトルの通り、フランスのブルゴーニュが舞台で、「恋のしずく」は広島の西条が舞台だった。

この2本は、それぞれワイン造り、日本酒造りの現場を丁寧に描いているのと、造り手たちの家族の物語になっているところが、よく似ている。

「おかえり、ブルゴーニュへ」は、ワイナリーを飛び出して世界を巡っていた長男が、父親が危篤という知らせを受けて、地元へ帰ってくるところから始まる。ワイナリーは長男の妹の長女と弟の二男が守っているのだが、やがて父親は亡くなり、3人のきょうだいが力を合わせてワイン造りを続けていくことになる。相続税を支払うために畑を売るかどうかで、3人は揉める。長男は恋人との仲がうまくいっていないし、長女はワイン造りの指揮をとる自信がない。二男は妻の実家との関係がうまくいかない。それぞれ悩みを抱えながらワインを造っていく物語は、よくあるけれど、細やかに描かれていて、心を打つものだった。ブルゴーニュのワイン畑の風景も気持ちがよかった。

ところで、映画の中でワイン造りを指揮する長女が悩むのが、除梗(じょこう)率だ。「梗」とは、ブドウの実についている小さな枝である。かつて、ワインは「梗」を取り除かずに造られていたのだが、やがて、「梗」を取り除くことで、えぐみを取り去るようになった。除梗すればえぐみはなくなりピュアな味になるが、除梗しすぎると味の複雑さやスパイシーさもなくなってしまう。100%除梗するという考えもある一方で、全く除梗しない全梗発酵という考えもある。

これは精白率(精米歩合)にも似た話だなと思って、面白かった。ついワインが飲みたくなって、ブルゴーニュの赤を買った。ブルゴーニュはほぼピノ・ノワールである。有名なオート・コート・ド・ニュイの2015年。5500円。これは100%除梗されていて、ピノ・ノワールのブドウの味が純粋に表現されている。上品で繊細、シルキーな味わいだった。ただ、一緒に食べたブルーチーズの蜂蜜掛けは合わなかった。チーズがそれしかなかったのだが、マリアージュとしては失敗だろう。ブルーチーズの濃厚さはピノ・ノワールの繊細さを感じられなくしてしまう。

精米歩合もかつては低いほどいいという考えがあって、鑑評会で金賞をとるには「YK35」(山田錦、熊本9号酵母、精米歩合35%)などと言われたが、最近は90%など、ほとんど食米みたいな精米歩合の日本酒も造られている。それはそれで、複雑で深い味わいがあって美味しい。最近、精米歩合99・9%の「九九・九」という酒が話題になっていたが、昨日、近所のスーパーで、精米歩合100%、つまり、全くの玄米で造られた日本酒を発見した。「醍醐のしずく」を造っている千葉の「寺田本家」の「発芽玄米酒 五人娘むすひ」である。といってもこれは日本酒ではないのだろうか。「九九・九」は純米酒だが、「むすひ」はラベルに「その他の醸造酒」と書いてある。少しでも精米していないと「清酒」にはならないのだろうか。瓶内発酵しているので「横倒厳禁」などと書いてあって、早く飲んでしまった方がよいのか、少し発酵させた方がよいのか、迷っている。食べ物には合わせにくいだろうなと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です