映画『華麗なる激情』とワイン

ミケランジェロは、ルネサンスを代表する芸術家の一人だ。上野の国立西洋美術館で開かれている彫刻展「ミケランジェロと理想の身体」に行く前に、ミケランジェロについて少し知っておこうと、映画『華麗なる激情』を見た。この映画の重要な場面に赤ワインが関わっている。これも一種の酒の映画だった。

ミケランジェロがバチカンのシスティーナ礼拝堂に描いた天井画の誕生物語である。1965年の作品で、監督は『第三の男』の名匠、キャロル・リード。ミケランジェロにふんするのは歴史大作には欠かせないスター、チャールトン・ヘストンだ。

ミケランジェロは、教皇ユリウス2世からシスティーナ礼拝堂に十二使徒を描くよう命じられるが、自分は彫刻家であって画家ではないと断ろうとする。しかし、教皇の権力で、仕方なく仕事をさせられる。少し描いて街へ出て、酒場で赤ワインを飲む。飲んですぐ吐き出してしまう。ワインがダメになっていたからだ。店主に文句を言うと、酒場の店主は自分も飲んでみて確認し、赤ワインの入った巨大な樽の栓を壊して、ワインを全て捨ててしまう。ダメなものは捨てるという、立派な店主だったのである。

これを見たミケランジェロは自分の仕事を反省し、それまで天井に描いていた画を壊して、全く違う画を新たに描き始める。その後、ユリウス2世とミケランジェロの反発と、奇妙な友情が描かれる。映画はワイドスクリーンを有効に使ったスケール感のある映像が素晴らしかった。戦闘場面や、街を埋め尽くす隊列など、スペクタクルに見応えがあった。ヘストンや、ユリウス2世を演じたレックス・ハリソンも映像のスケールに負けない存在感を見せている。

ワインの飲酒が娯楽として広まったのはルネサンス以降で、保存技術が向上したのは17世紀後半らしいので、その間の物語ということだろうか。恐らく史実とは違うのだろうが、映画の中の話とはいえ、ダメになった赤ワインからシスティーナ礼拝堂の天井画を生み出したミケランジェロは、さすがである。ムダに酒を飲んでいない。

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