原宿「sora an」

原宿の竹下通りは大人の行く所ではないというイメージがある。通りがいつも人で埋まっている。満員電車のようで居心地が悪い。だが、横道を入ってすぐの通りは、ウソのように落ち着いている。「ブラームスの小径」という名前は趣味がよくないが、蕎麦の「sora an」や中華の「はしづめ」のようないい店が並んでいる。

水曜日の午後6時すぎ、2人で「原宿 sora an(素楽庵)」へ入った。本来、水曜は定休日だが、この日は予約が2件入ったので開けたという。運が良かった。

蕎麦と豚しゃぶがメインだが、お店はカフェ風。最近はこういう店が多い。最初にハートランドビールの中瓶を飲んで、日本酒。福島・会津喜多方の大和川酒造の弥右衛門純米辛口、山形県酒田市・麓井酒造の麓井、青森県弘前市・三浦酒造のモヒカン娘純米、山形県酒田市・酒田酒造の上喜元「こぶし」超辛口特別純米を1合ずつ飲んだ。

弥右衛門は夢の香という酒米を使い、精米歩合は60%。やわらかい甘みと酸味を感じるが、キレもある。後味にほのかな苦み。麓井は瓶を見なかったが、純米本辛だと思う。吟醸香は感じなかったし、やさしい味で、あっさりとしてコクはないが余韻はあった。モヒカン娘は昔、良く飲んだ。優しく穏やかな酒で、酸味はあるけれどまろやかで、後味も爽やか。「こぶし」は日本酒度+10でスパッとしたキレがある。

お通しはエリンギ、オクラ、レンコン。ぶりトロの刺し身、手造り寄せ豆腐、三元豚のメンチカツ、三元豚の無添加ソーセージ、干し山芋のサクサク焼きを食べて、〆は蕎麦。私は豚せいろを、もう1人は胡麻だれせいろを出してもらった。

居心地のよい場所で飲むと、酒もより美味しく感じる。もう少し暑さが和らいだら、ブラームスの小径に面したテラス席で飲みたい。テラス席が心地よい季節は、一年のうちでほんの数週間しかない。その貴重な時間を味わいたい。

 

 

 

 

 

カフェ風の蕎麦屋で鯨波と小野桜ふかもり

夏の谷中を午後4時ごろ、2人で歩いていた。昼も食べていないし、何か食べて、酒も飲みたい。かなり早めだが夕食にしたい。そう思ったが、当然ながら、そんな時間に開いている居酒屋はない。うだるような暑さの中、谷中銀座から千駄木まで歩いて、さらに根津まで歩いたが、どの店も午後5時半以降のオープンだった。そして歩き続けて、ついにカフェ風の店構えだが、開いている蕎麦屋を見つけた。店名は「カワイ」。店の前のメニューを見ると、日本酒もあるし、一通りの蕎麦屋のつまみも書いてある。

午後4時半ごろの入店。当然、他の客はいない。店内は外観と同じく、蕎麦屋というより、カフェである。まずは生ビール。喉が渇いていたので、実にうまい。クリームチーズの醤油漬け本わさび添えと、炙り鴨の生ハム焼き葱のマリネ添えを注文する。クリームチーズは自家製のかえしに漬けてあり、焼き葱はバルサミコドレッシングでマリネしてある。上品にひと工夫してある。

日本酒は2種類しか置いていない。鯨波純米吟醸と、小野桜ふかもり特別純米生酒。どちらも岐阜県中津川市の酒である。

鯨波は恵那醸造。ひだほまれ100%で、精米歩合は大吟醸と同じ50%まで磨いている。アルコール度数は16~17度とやや高め。香りはフルーティー。米の甘みと旨味を感じるが、キレもある。酸味は少なめだ。小野桜は山内酒造場。精米歩合55%、アルコール度数15~16%。こちらはあっさり、爽やかで飲みやすい。米の旨味もあるが、後味はすっきりとしている。

2人でそれぞれ2合ずつ飲んだ。一升瓶からとっくりになみなみと入れてくれる。さらに焼き味噌、蕎麦豆腐を頼んだ。焼き味噌は葱や蕎麦米、くるみが練り込んであり、何とも香ばしい。蕎麦豆腐も蕎麦の実の食感が美味しかった。〆は鴨つけせいろ蕎麦と、つけとろせいろ蕎麦。もうかなり酔っていたが、蕎麦の味と香りがきちんとして、実に美味しかった。

まだ陽の高いうちからこれほどレベルの高い酒と肴が楽しめるのは、本当に貴重な店だ。

六本木「ちゃ路」

六本木を2人で歩いて、居酒屋を探した。何となく入ったのが「ちゃ路」だった。ごく普通の居酒屋だと思ったが、実にいい日本酒が揃っていた。

山口五橋fiveグリーン純米生原酒、みむろ杉(おそらく、特別純米辛口だと思うが、よく見ていなかった)、富久長ひやおろし秋桜純米吟醸、山本純米吟醸ドキドキ。

五橋は岩国の酒井酒造。生原酒っぽい旨味、甘味、やわらかさがあり、濃い味で酸は抑えめ。精米歩合70%。アルコール分16度。生原酒の良さがよく出ているように思う。

みむろ杉はすっきり、キレがいい。後口が爽やかで、辛みもあり、とてもあっさりしている。奈良県桜井市の今西酒造だ。

富久長は、契約栽培の八反草で有名な東広島市の今田酒造本店。「秋桜」は瓶火入れで10か月の瓶貯蔵らしい。米は八反錦などを使い、精米歩合60%。アルコール度数は16度。甘味は抑え気味で味が本当にまとまっている。すっきりとして、キレもある。

山本はとても個性的な味。最初に米の味はあるが、すぐにレモン水みたいな味になる。途中からはもう、レモン水そのものである。秋田県の山本合名。秋田県産酒こまち、精米歩合麹米50%、掛け米55%。日本酒度+2。酸度12・3。アルコール度数14度。リンゴ酸を多く生成する特殊な酵母を使っているらしい。リンゴ酸をレモン水みたいな味に感じたのだろう。夏らしく爽やかで、かつ面白い味だ。

お通しは玉子焼き。新秋刀魚塩焼き、シマアジ刺身、焼き餃子、蟹クリームコロッケ、神威豚肩ロース焼きを注文した。料理も美味しかった。

その後、柏で降りて、AKEBIへ寄ってしまった。AKEBIは柏、我孫子エリアでは、のじじRと並んで最も好きなラーメン店。醤油味の中華蕎麦では全国で見てもかなりの高レベルだと思う。中華蕎麦の醤油を食べた。煮干中華蕎麦もあり、もう1人が注文した。この煮干らーめんは煮干の味はよく出ているけれど、ガツンとくるようなものではなく、とても優しい味だった。

萬歳楽、手取川、天狗舞、加賀鶴、白牡丹・・・

有楽町、銀座には、県のアンテナショップが集まっている。その一つ、石川県のアンテナショップ「いしかわ百万石物語・江戸本店」で利酒会があった。

500円でおつまみと、3種類の酒が試飲できる。今回は白山市の特集だった。地理的表示保護制度であるGI(Giographical Indication)に、日本酒で初めて指定されたのが白山市だ。

地下一階の会場で、立ち飲みである。開始時間の午後5時半を少し回ったくらいに行ったのだが、すでにカウンターはいっぱい。テーブルの方で飲む。立ち飲みである。

すべて白山市の酒だ。萬歳楽純米生貯蔵酒+5辛口(精米歩合70%、小堀酒造店)、手取川大辛口純米酒名流+10辛口(精米歩合75%、吉田酒造店)、天狗舞生酛仕込純米-1旨口(精米歩合60%、車多酒造)。それぞれに特徴はあるが、どれも旨い。白山市の実力を感じた。

萬歳蔵は「劔」も美味しかったが、この生貯蔵酒は米の旨味がグッと迫ってくる。米の旨味が凝縮されている。手取川はすっきりとキレがいい。天狗舞はじわーっと旨味が伝わってくるような味だった。

おつまみは揚げ茄子のポン酢かけ、剣先なんばのチョリソーとパプリカのソテー、ふぐの子糠漬。酒も旨かったし、おつまみも旨かったので、他の有料試飲も頼みたかったが、立ち飲みが苦手だし、どんどんと人が来るのでさっさと店を出た。

その後、近くの広島県のアンテナショップ「ひろしまブランドショップTAU」の2階にある広島焼の店「鯉々」で飲み直す。まず瓶ビールで喉を潤し、うまだれキャベツ、広島県産牡蠣昆布、コーネと注文する。

コーネは牛の希少部位で、コラーゲンとゼラチンが豊富な前足の脇から胸のあたり。なぜか広島でしか食べられていないという。あんまりゼラチンっぽいのは苦手だなと思っていたら、そんなわけでもなく、とても美味しかった。これはまた、広島に行った時に食べてみたい。酒は広島を代表する加茂鶴と白牡丹。それに瀬戸内レモン酎ハイ、さらに和ら麦水割りも頼んでしまった。

最後は肉玉そば目玉焼きトッピング。3種類から選べる麺は唐辛子麺。広島焼はさすがに美味しかった。現地で食べたのと同じ味だ。東京では美味しい広島焼はめったに食べられない。東京のお好み焼きや広島焼は、キャベツが大きく切ってあり、火が十分に通っていなかったり、芯が残っていたりする。細かく切ればいいだけなのに、なぜ、それが出来ないのかといつも思う。

これだけでも飲みすぎだが、帰宅後、なぜかまだ飲み足りなくて、マッカランをストレートで飲む。The MACALLAN FINE OAK HIGHLAND SINGLE MALT SCOTCH WHISKY 12。マッカランの交響楽のような複雑な香りはやはり凄い。

蕎麦の名店「松風庵」と「花の九十九里」

我孫子、柏地区には、蕎麦の名店が多い。有名なのは柏の竹やぶだが、湖庵や松風庵も素晴らしい。

久しぶりに知人と2人で我孫子の松風庵に行った。ここは蕎麦が出るまで時間がかかるので、まず瓶ビールを注文する。アサヒスーパードライの中瓶に、蕎麦の実と滑子、青唐辛子を和えたものが出てくる。これが実に美味しい。

ビールを飲みほしてもまだ蕎麦はこない。「冷酒」とだけ壁に貼ってある日本酒を注文する。出てきたのは千葉県山武市の寒菊銘醸の「九十九里 純米酒」だった。日本酒らしい、しっかりとした酒である。飲み口は柔らかいが、後味に甘味と苦みがあって、米の旨味がきちんと表現されている。燗でやや辛くしてもいいかもしれない。

蕎麦は平打ち蕎麦と細打ち江戸蕎麦の合盛せいろと、平打ちと極荒蕎麦の合盛りで鴨汁蕎麦を2人で食べる。平打ちと細打ちは蕎麦の香りがふわーっと立って、スーッと体に入っていくような感じ。日本酒で言うと大吟醸である。極荒は無濾過純米原酒みたいな、強い蕎麦。蕎麦粉の味が力強く、のど越しはいいけれど、味はガツンと残る。塩で食べると大変に美味しい。この塩で食べる極荒と九十九里がとてもよく合う。九十九里は地元産のこしひかりを使っている。精米歩合は65%。癖がなく、実にオーソドックスな日本酒の味。味が濃厚な松風庵の蕎麦には、淡麗辛口よりもこの方がいい。

松風庵でお昼から、九十九里を飲みながら蕎麦を食べるのは、何ともいえず贅沢である。

 

 

恵比寿「若どり」

恵比寿で遊ぶ。ヱビスビール記念館のティスティングルームで「琥珀ヱビス」を飲んでから、知人と博多水炊きの店「若どり」へ。

酒は焼酎が中心だが、日本酒もそこそこの種類を置いている。今は「夏の日本酒」というメニュー。120ミリで1000円近いのはかなり高いが、なかなかいい酒がそろっていた。

2人で飲んだのは、石鎚無濾過純米槽搾り、晴田純米五百万石、百十郎純米Limited CUTIE、獺祭純米吟醸。気に入ったのは百十郎。このリミテッドシリーズは飲み口がフルーティーでスーッと飲め、酸味が爽やかで味に涼しさがある。夏にぴったりだ。岐阜県の林本店は女性が蔵元。女性らしい華やかさが表現されている、といえば性差別だろうか。2杯飲んだ。一方、愛媛県の石鎚酒造の「石鎚」は、無濾過純米らしいグッとくる力強い味ならが、すっきりと飲める。酒米は愛媛県産の松山三井。松山三井は本来、大粒でタンパク質が少ないので、高精白に向くという。「石鎚 無濾過純米」は精米歩合60%である。

梅水晶、活〆鱧の刺身と夏の日本酒はよく合った。濃厚博多水炊きは鶏白湯ラーメンのようなスープが実に美味だったが、後で喉が渇いて困った。水炊きに豆腐と葛切りを追加し、最後はチーズリゾットにした。