六本木「ちゃ路」

六本木を2人で歩いて、居酒屋を探した。何となく入ったのが「ちゃ路」だった。ごく普通の居酒屋だと思ったが、実にいい日本酒が揃っていた。

山口五橋fiveグリーン純米生原酒、みむろ杉(おそらく、特別純米辛口だと思うが、よく見ていなかった)、富久長ひやおろし秋桜純米吟醸、山本純米吟醸ドキドキ。

五橋は岩国の酒井酒造。生原酒っぽい旨味、甘味、やわらかさがあり、濃い味で酸は抑えめ。精米歩合70%。アルコール分16度。生原酒の良さがよく出ているように思う。

みむろ杉はすっきり、キレがいい。後口が爽やかで、辛みもあり、とてもあっさりしている。奈良県桜井市の今西酒造だ。

富久長は、契約栽培の八反草で有名な東広島市の今田酒造本店。「秋桜」は瓶火入れで10か月の瓶貯蔵らしい。米は八反錦などを使い、精米歩合60%。アルコール度数は16度。甘味は抑え気味で味が本当にまとまっている。すっきりとして、キレもある。

山本はとても個性的な味。最初に米の味はあるが、すぐにレモン水みたいな味になる。途中からはもう、レモン水そのものである。秋田県の山本合名。秋田県産酒こまち、精米歩合麹米50%、掛け米55%。日本酒度+2。酸度12・3。アルコール度数14度。リンゴ酸を多く生成する特殊な酵母を使っているらしい。リンゴ酸をレモン水みたいな味に感じたのだろう。夏らしく爽やかで、かつ面白い味だ。

お通しは玉子焼き。新秋刀魚塩焼き、シマアジ刺身、焼き餃子、蟹クリームコロッケ、神威豚肩ロース焼きを注文した。料理も美味しかった。

その後、柏で降りて、AKEBIへ寄ってしまった。AKEBIは柏、我孫子エリアでは、のじじRと並んで最も好きなラーメン店。醤油味の中華蕎麦では全国で見てもかなりの高レベルだと思う。中華蕎麦の醤油を食べた。煮干中華蕎麦もあり、もう1人が注文した。この煮干らーめんは煮干の味はよく出ているけれど、ガツンとくるようなものではなく、とても優しい味だった。

萬歳楽、手取川、天狗舞、加賀鶴、白牡丹・・・

有楽町、銀座には、県のアンテナショップが集まっている。その一つ、石川県のアンテナショップ「いしかわ百万石物語・江戸本店」で利酒会があった。

500円でおつまみと、3種類の酒が試飲できる。今回は白山市の特集だった。地理的表示保護制度であるGI(Giographical Indication)に、日本酒で初めて指定されたのが白山市だ。

地下一階の会場で、立ち飲みである。開始時間の午後5時半を少し回ったくらいに行ったのだが、すでにカウンターはいっぱい。テーブルの方で飲む。立ち飲みである。

すべて白山市の酒だ。萬歳楽純米生貯蔵酒+5辛口(精米歩合70%、小堀酒造店)、手取川大辛口純米酒名流+10辛口(精米歩合75%、吉田酒造店)、天狗舞生酛仕込純米-1旨口(精米歩合60%、車多酒造)。それぞれに特徴はあるが、どれも旨い。白山市の実力を感じた。

萬歳蔵は「劔」も美味しかったが、この生貯蔵酒は米の旨味がグッと迫ってくる。米の旨味が凝縮されている。手取川はすっきりとキレがいい。天狗舞はじわーっと旨味が伝わってくるような味だった。

おつまみは揚げ茄子のポン酢かけ、剣先なんばのチョリソーとパプリカのソテー、ふぐの子糠漬。酒も旨かったし、おつまみも旨かったので、他の有料試飲も頼みたかったが、立ち飲みが苦手だし、どんどんと人が来るのでさっさと店を出た。

その後、近くの広島県のアンテナショップ「ひろしまブランドショップTAU」の2階にある広島焼の店「鯉々」で飲み直す。まず瓶ビールで喉を潤し、うまだれキャベツ、広島県産牡蠣昆布、コーネと注文する。

コーネは牛の希少部位で、コラーゲンとゼラチンが豊富な前足の脇から胸のあたり。なぜか広島でしか食べられていないという。あんまりゼラチンっぽいのは苦手だなと思っていたら、そんなわけでもなく、とても美味しかった。これはまた、広島に行った時に食べてみたい。酒は広島を代表する加茂鶴と白牡丹。それに瀬戸内レモン酎ハイ、さらに和ら麦水割りも頼んでしまった。

最後は肉玉そば目玉焼きトッピング。3種類から選べる麺は唐辛子麺。広島焼はさすがに美味しかった。現地で食べたのと同じ味だ。東京では美味しい広島焼はめったに食べられない。東京のお好み焼きや広島焼は、キャベツが大きく切ってあり、火が十分に通っていなかったり、芯が残っていたりする。細かく切ればいいだけなのに、なぜ、それが出来ないのかといつも思う。

これだけでも飲みすぎだが、帰宅後、なぜかまだ飲み足りなくて、マッカランをストレートで飲む。The MACALLAN FINE OAK HIGHLAND SINGLE MALT SCOTCH WHISKY 12。マッカランの交響楽のような複雑な香りはやはり凄い。

富久長「八反草純米吟醸」

広島の酒造好適米に「八反」系がある。有名なのは八反錦だろう。これら八反系のルーツといわれているのが、八反草だ。1875年に育種されたが、背丈が高く倒れやすいため栽培が難しく、その後、途絶えてしまったという。それを2004年に東広島市の今田酒造本店が復活させた。八反草は酒造好適米ではなく、今田酒造の「富久長」にしか使われていないという。

その八反草を使った純米吟醸酒が富久長契約栽培復活米八反草純米吟醸だ。契約栽培米の八反草を100%使用し、精米歩合はこうじ米50%、掛米60%。アルコール度数16度。酵母は「なめらか、軽快、フルーティー」を目指して広島県が開発した「もみじ酵母」が使われている。

広島では三浦仙三郎が軟水醸造法(三浦式醸造法)を生み出すまでは、「悪酒」と言われるほど、酒の出来はよくなかったとされている。当時の酒を今、飲んでみたらどうなのか、本当のところはよくわからないが、八反草はその「悪酒」のころの酒米だ。富久長のウェブサイトによると、小粒で心白がなく、硬くて吸水性がよくないが、その一方で、硬いので高精白に向いており、溶けにくいので雑味が出にくく、爽快なキレ味になるという。

わりとすっきりとした酒をイメージして飲んでみたら、香りは確かにフルーティーだが、米の旨味が力強く口の中に広がった。酸味も甘みもあるしっかりとした素朴な味だが、キレはいい。後口が残らない。確かに爽快なキレ味と言える。

笹かまぼこ、金目鯛の湯引き、ひじき煮、本ズワイガニの押し寿司と一緒に飲んだ。

映画『恋のしずく』

酒蔵を舞台にした映画『恋のしずく』を試写で見た。『ラーメン侍』の瀬木直貴監督の新作だ。川栄李奈の初めての主演作だが、実に真っ当な「日本酒映画」だった。日本酒好きは必見だと思う。日本酒造りや、酒蔵を取り巻く問題が、丁寧に描かれていて、今の日本酒の全体像のようなものが、よくわかるのである。

ワイン留学を目指す女子大生が、農大の実習で広島県東広島市西条の酒蔵に行かされることになる。だが、彼女はワイナリーでの実習を希望しており、しかも、日本酒嫌いだった。この女子大生を演じているのが川栄である。実習先の酒蔵で女子大生が出会うのは、病気の蔵元(大杉漣)と、酒蔵を継ぐのを嫌がって別の仕事をしている息子、頑固な杜氏など。いかにも典型的な人物像だし、蔵元が世を去り、息子が酒蔵を継ぐ決心をするところなど、ありがちだが、現在の日本の多くの小さな酒蔵もまた、こんな感じなのだろう。

女子大生は美味しい日本酒(おそらくフルーティーですっきりとした白ワインのような吟醸酒。架空の酒蔵の酒だが、金光酒蔵が商品化したらしい。やはりすっきり系の純米吟醸だろうか)に出会って日本酒へのイメージが変わり、日本酒が好きになっていく。この展開も予想通りだ。女子大生を巡る人々の恋愛模様もあって、青春映画でもある。

それらの話は気持ちがよいほど想像通りに進み、それなりに楽しい。川栄もごく普通の女子大生を生き生きと演じている。だが、日本酒好きにとって嬉しいのは、洗米から蒸米、製麹、酒母造り、山おろしと、日本酒造りの過程がきっちりと描かれていることである。「平行複発酵」というような言葉が出て来る映画は、なかなかないと思う(『おかえり、ブルゴーニュへ』も「除梗」という言葉が出て来る珍しい映画だったが)。

映画に出て来る酒蔵は、おそらく賀茂鶴酒造だろう。セットではなく、実際の酒蔵で撮影しているし、西条の街並みも、美酒鍋も、「酒まつり」の様子も出てきて、西条のご当地映画としても魅力的である。この映画を見て、私は今年の夏休み(といっても9月の終わりごろだが)は西条へ行くことにした。

大杉漣は死ぬ役だが、本当に亡くなってしまい、これが遺作となった。途中で死ぬので出番は少ないが、昔ながらの蔵元をしみじみと演じていて、印象に残った。