マルキ水産で杜氏鑑、加茂鶴、吉野杉の樽酒

北柏にある「マルキ水産」で杜氏館、加茂鶴、吉野杉の樽酒を飲んだ。

ここは6月にオープンした店で、刺身、串カツ、鮨が食べられる。近所なので時々行く。店内はファミリーレストランみたいな感じで、ひとつひとつの席が離れているし、注文はタッチパネルのタブレットなので、一人でも周囲を気にせずゆっくりとできる。

まずはザ・プレミアムモルツの生ビールを飲、串カツは鶉、豚バラ、笹身、鱚、牡蠣。平目刺身と鮭の焼きハラスも食べた。

杜氏鑑は徳利で出てきた。灘の白鶴酒造の酒で、山田錦を100%使っているが、アルコール添加の普通酒である。精米歩合は70%、日本酒度+2、酸度1・4、アルコール度15~16%。やや黄色がかった色で、米の甘味や旨味、酸味、いろんな味があって複雑。コクもある。ピリピリとしたアルコールの刺激と辛みも感じた。アルコール添加の普通酒は好まれない向きもあるが、どんな料理にも合う酒である。

西条の加茂鶴酒造の加茂鶴純米吟醸は、広島の酒らしい濃醇さ。精米歩合は55%、日本酒度+4、酸度1・8、アルコール度数16度。香りはあまり感じなかったが、薄いレモンの香りだろうか。米の旨味と酸味が濃厚だった。

奈良の長龍酒造の吉野杉の樽酒は、かなり個性が強い。精米歩合70%、日本酒度は0、酸度は1・2、アルコール度数は15~16度である。「樹齢約80年の吉野杉甲付樽に肌添え」させているという。甲付とは、杉の外側が白く内側が赤い部分を使った樽のことらしい。肌添えとは初めて聞く言葉だが、樽に入れて熟成させることなのだろう。長龍酒造は1964年に日本で初めて、瓶詰の樽酒を発売したという。杉の香り、樽の味がはっきりと感じられる。コクと苦みもあって、キレもいい。

〆にはすぐ隣のラーメン店「のじじR」で煮干中華そば(ノーマル)を食べた。マルキ水産で酒を飲み、のじじRで〆のラーメンを食べるというのを、一度、やってみたかった。「カニ歩き」である。のじじRは柏・我孫子地区で最高のラーメン店だと思う。煮干中華そばは煮干しの味の強さでイージー、ノーマル、ハード、エクストラハードなどとあるが、私はノーマルが好きだ。

天山サルー・スパークリング

夏もすでに終わってしまったが、佐賀県小城市の天山酒造から送ってもらった発泡日本酒がまだ残っていた。発泡日本酒、またはスパークリング日本酒は、いかにも夏の酒という感じがする。天山サルー・スパークリングを、夏の終わりを惜しんで飲んだ。肴は要らない。カレーを食べる前の食前酒である。

発泡日本酒には3種類ある。瓶の中で発酵が続いている瓶内2次発酵と活性にごり酒、そして炭酸ガスを注入する方式である。炭酸ガス注入方式を否定する人もいる。個人的には、酒が美味しければ必ずしも否定する必要はないと思う。サルー・スパークリングも炭酸ガスを注入する方式だが、爽やかで美味しい。

2018年7月製造で、精米歩合は75%。アルコール度数は10%と軽い。ギンギンに冷やして飲むのであまり香りはしないが、ほのかに乳酸が香る。口に含むと、シュワシュワと炭酸の爽やかな刺激が広がり、その後に米の甘さ、まろやかなヨーグルトの味、そして後味にはレモンやグレープフルーツのような苦み、さらには枯葉のような味(などと言いながら、枯葉を食べたことはない。あくまでもイメージである)が余韻として残る。

スパークリングワインのような軽やかさもありながら、日本酒としての味もちゃんとしている。美味しい発泡日本酒だと思う。口の中は夏。飲んでしまうと、夏も終わったような気になった。

発泡日本酒は、スパークリングワインのように、胃を活性化してくれる。その後に食べたデリーのカシミールカレーはとても美味しかった。デリーのカレーは大好きで、通販で大量に買って、毎週食べている。

 

 

「ゐまる」にて不動の吊るし、W、日高見など

柏の「ゐまる」は人に知られたくない店だ。いい酒が揃っていて、料理も美味しい。最後に赤酢の酢飯の鮨を食べて、それほど高くない。柏には「まる酒(しゅ)」という日本酒居酒屋もあり、こちらもいい日本酒を揃えている。柏の「まる」は素晴らしい。

久しぶりに2人で「ゐまる」に行った。カウンターとテーブルがあるが、カウンターだとメニューにはない美味しいお酒をご主人に教えてもらえるので、カウンターに座る。

まずはサッポロラガーの瓶ビール。お通しは鰺の梅肉紫蘇巻きだった。「新さんまの骨まで食べられるスーパー塩焼き肝ソース」は、身の部分は塩焼きで、さんまの顔や骨の部分はカリっと揚げてあって、本当に全部、食べられる。そのままでも香ばしくて実に旨いが、肝ソースをつけると濃厚な魚の旨味が味わえる。こんなさんまは食べたことがない。秋かますの炙り刺身梅肉添えは、かますの生臭さはまったくなく、刺身の新鮮さも残っている。炙りの香ばしさもあって、これも美味しい。なめ茸と焼き油揚げは混ぜて食べると濃い味で、酒肴としては最高だ。いぶりがっことクリームチーズの塩昆布和えは、クリームチーズと塩昆布、いぶりがっこという組み合わせが見事。最後に鮨。本日のいいとこどり7貫は、イクラご飯、雲丹、中トロ、〆鯖、平目、赤貝、トロたたきだったと思う。酔ってしまったので赤貝、トロたたきのあたりはあやふやだ。鮨はどれも醤油を付けずにいただく。小ぶりで、一口で食べられるのがいい。赤酢の酢飯がネタの味と相まって、実に美味しい。ひとつひとつの料理や鮨に工夫があり、感動があった。

酒は半合ずつ頼める。まずはメニューにあるものから。新潟市の越後亀鶴(越後鶴亀)はメロンのような香りと味。とてもきれいな酒。「エチゴビール」はここの商品らしい。千葉の不動つるししぼり純米大吟醸(鍋店)は乳酸の柔らかい酸味と旨味が広がる。余韻が長い。飛騨・古川のW生原酒純米(渡辺酒造店)は甘味と余韻が特徴的でエレガント。石巻の日高見助六江戸桜純米大吟醸(平孝酒造)は甘めだがあっさりとしている。助六江戸桜はカジュアルな日本酒を目指して作ったそうだが、なるほどと思った。「上きげん」で有名な加賀の鹿野酒造が造った益荒男山廃純米極熟成原酒にはウイスキーのようなコクがあった。熟成感はもちろん、苦みも深みもある。

そしてご主人のお勧めで燗酒を2種類。岐阜県・中島醸造の小左衛門山廃純米酒は焼いたパンのような香り。まろやかな乳酸の酸味と旨味があってとてもふくよか。百十郎も岐阜の酒だ。蔵元林本店である。かなり酸味あって、これも乳酸系だろうか。これからの季節は燗もいい。

ミケランジェロと理想の身体

国立西洋美術館で開かれている「ミケランジェロと理想の身体」展に行った。展覧会は、「子どもと青年の美」「ミケランジェロと男性美の理想」「伝説上のミケランジェロ」の3部構成。ほとんど予備知識がなく、ただミケランジェロという名前にのみ惹かれて入ったのだが、ミケランジェロの作品をたくさん見られるんだろうなとは思っていた。ところが、70点の展示のうち、ミケランジェロの作品は2点しかなかった。しかも、そのうち1点は未完成作で、もう1点はスペイン内乱で破壊され、本来の40%しかない断片を復元したものだった。その他は、古代ギリシャ・ローマ時代とルネサンス期の彫刻や壁画、絵画、素描、工芸など。そして、ミケランジェロを描いた絵画や胸像などだった。

しかし、ミケランジェロの大理石彫刻は世界に40点ほどしかなく、2点同時に見られるのは極めて貴重だという。そんなこともよく知らなったのだが、ミケランジェロの作品にはやはり圧倒された。

ギリシャ・ローマ時代とルネサンスの彫刻は、体重を片方の脚にかけ、体を左右非対称にしたコントラポストという立ち方で、筋肉を強調して動きを出しているものがほとんどだ。それはそれで見事なのだが、ミケランジェロは筋肉をそれほど強調していない。「若き洗礼者ヨハネ」も「ダヴィデ=アポロ」も静かにスッと立っているような感じだ。それなのに、筋肉を強調して動きを出している他の作品よりも、はるかに存在感がある。まるで、それまでの作品すべてが、ミケランジェロの作品の素晴らしさをより強調するためだけに展示されているようだ。

それに、「若き洗礼者ヨハネ」は40%しかオリジナルが使われていない復元だという点で、また、「ダヴィデ=アポロ」は未完成だという点で、想像力を刺激する。完成品であれば、我々は作品そのものに向き合うことが出来る。だが、目の前にある作品は、復元だったり、まだ未完成だったりするので、我々は作品そのものに向き合うことが出来ない。どうしても完成品を想像してしまう。それは想像ではなく、創造かもしれない。ミケランジェロというルネサンスの巨人の威光もあって、目の前の作品以上の作品を幻視してしまった。

ミケランジェロ展の後、少し時間があったので、常設展を見た。これが驚きだった。国立西洋美術館の常設展は初めて見たのだが、こんなに充実しているとは思わなかった。ティントレット、ブリューゲル、ルーベンス、ド・ラ・トゥール、フラゴナール、ドラクロワ、コロー、クールベ、マネ、モネ、ルノワール、モロー、ロセッティ、ゴッホ、ゴーギャン、ドニ、ルオー、ピカソ・・・中世から現代までの西洋美術史を一覧できるほどの作品が揃っている。とても1、2時間では見切れない。毎日でも通いたいほどだった。

 

 

菊姫山廃仕込純米酒

田崎真也氏はワインのソムリエとして有名だが、日本酒のテイスティングの基準にも大きく関わっているとお聞きした。その田崎氏が、120種類の日本酒をテイスティングして、どのような味と解釈したかを書いた本が、「No.1ソムリエが語る、新しい日本酒の味わい方」(SB新書)だ。日本酒の味や香りをどのように表現するのが正解なのか、よく分からずに悩んでいたので、読んでみた。

この本に出ているのと同じ日本酒を飲んでみて、田崎氏のテイスティングと比べてみる。とりあえず飲んでみたのが、日本酒で地理的表示、GI(geographical indications)を初めて取得した石川県白山市にある菊姫合資会社の「菊姫山廃仕込純米酒」だ。原料米は兵庫県三木市吉川町産の山田錦100%使用。精米歩合70%。アルコール分は16度以上17度未満とやや高めだ。あまり削りすぎず、特A地区の山田錦の味を前面に押し出した、濃醇な米の旨味が想像できる。山廃なので、乳酸も強いはずだ。

黄色がかった、いかにも濃醇そうな色。サワークリームのような、乳酸系の香りがする。味はヨーグルトのような旨味に、しっかりとした酸味、そしてじわーっと余韻が続く。全体的には辛口だが、米の旨味がとてもよく出ている。

これを田崎氏はどう書いているか。「酒母(酛)の違いを味わう」として、同じ菊姫の特選純米と山廃仕込純米酒の比較の中で、こう書いている。

「(一方の)山廃には、米や麹由来の香りよりは、乳酸発酵による乳製品的な香りがよりはっきりとしており、サワークリームやヨーグルト、クリームチーズや発酵バターのような香りに、杏仁豆腐や杉の木の香り、ほのかに白いスパイス香や菩提樹の花の香り、栗のようなナッツ香などが調和する」「味わいは(中略)山廃はよりしっかりとした酸味とコクを与える旨味が広がり、余韻が長く持続する」

自分の感覚ともそれほど外れてはいないが、杏仁豆腐や杉の木の香り、スパイス香や菩提樹の花の香り、ナッツ香などは分からなかった。そう言われて改めて嗅いでみると、なるほど、このちょっとウイスキーみたいな甘い香りを杏仁豆腐とか、ナッツ香というのかな、などと思う。菩提樹の花については、嗅いだ記憶がないので全く分からない。

さすがに有名なソムリエだけあって、表現も豊かだし、微妙な香りまで嗅ぎ分けていると感心するが、我々にはちょっと難しいかもしれない。この本には「ライラックやスイカズラの花の香り」「ブランマンジェの香り」「ほのかに青竹やジュニパーベリーのようなスパイス香」などとあるが、もはや香りを何かに例えて伝えるのに、その例えられているもの、そのものが分からない。田崎氏のソムリエとしての技能は伝わってくるが、酒の香りは伝わってこない。これではやはり、何が正解なのか、分からないのである。

もう少し単純明快な答えが欲しい。日本醸造協会や日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会、料飲専門家団体連合会、日本酒学講師の会などに、その答えを作ってほしい。

『肉体の悪魔』と1905年のポマール

DVDでクロード・オータン=ララの『肉体の悪魔』を見た。ジェラール・フィリップが有名になった、1947年のモノクロのフランス映画だ。この作品には、赤ワインを巡る印象的な場面がある。

舞台は1917年、第一次世界大戦が終わろうとしているフランス。17歳の高校生、フランソワは、高校に臨時に設けられた病院の新人看護婦マルトに恋をする。マルトは年上で、軍人の婚約者もいたが、フランソワは諦めない。強引に言い寄って、2人でレストランに入る。そこで、1905年のポマールを注文する。

ポマールはブルゴーニュの村の名前であり、ブルゴーニュを代表する赤ワインの名前である。ブルゴーニュなので、ピノ・ノワール。1905年の赤ワインは17年時点では、12年ほど熟成されている。それほど安くはないと思われる。もちろん、高校生のフランソワには金がないので、マルトが払ったのだろう。

マルトはワインがコルク臭いとフランソワにウソを言い、分からないのかと挑発する。フランソワはそれがウソであることを感じつつ、ソムリエに文句を言う。ソムリエは自分で飲んでみて、さらに同僚にも飲ませて、問題はないと主張するが、フランソワは納得しない。

ワインがコルク臭くなる現象はブショネといい、高級ワインの1割近くに起こるという。だが、よほど自信がないとクレームはつけにくいだろう。結局、ソムリエは認めなかったが、支配人が出てきてワインを替えるように指示して決着する。

この場面はなかなかよく考えられている。自分の感覚というのは、他人とは絶対に共有できない。マルトはその共有できない感覚をフランソワに共有するよう、強要したのである。しかも、ウソの感覚だ。それをフランソワは、ウソと知りつつ、あえて受け入れる。それはエロティックなゲームであり、2人だけの秘密でもある。この映画のテーマである不倫の恋とも結びつき、2人が関係を深めるきっかけとしては、とてもうまい。

その後、2人はいったんは別れ、マルトは軍人と結婚する。だが、再会した2人は肉体関係を持ってしまい、やがてマルトは妊娠してしまう。17歳の少年と年上の既婚者の肉体関係は、今では犯罪になりかねないが、映画は2人の恋と肉欲を美しく、官能的に描く。戦時下という特殊な状況で、年下の男の身勝手さに苦しみながら別れられない女性を、シュリーヌ・プレールが繊細に演じている。

2人が初めて肉体関係を持つ場面に出て来る、グロッグという酒も印象的だ。フランソワはマルトの家まで、雨の中をずぶ濡れになってやって来る。マルトはフランソワの冷えた身体を温めるため、グロッグを作る。ラム酒をお湯で割り、レモンや角砂糖を入れて、シナモンスティックなどを添えたホット・カクテルだ。「グロッキー」の語源は、このグロッグで酩酊した人のことだという。

マトゥア ランド・アンド・レジェンド・シャルドネ

佐藤洋美先生のワイン入門講座で、ソーヴィニヨン・ブランとシャルドネの特徴について教えてもらった。ソーヴィニヨン・ブランについては干し草の香りやグレープフルーツのような味がよく分かったので、今度はシャルドネを飲んでみた。

マトゥア ランド・アンド・レジェンド・シャルドネ2015は、ニュージーランドの白ワインである。 ハンドピッキング(手摘み)。フレンチオーク樽で、9か月間熟成されている。

色は薄い黄緑色。グレープフルーツ、青りんごのような香りだが、空気と触れると樽香が前に出てくる。最初にかすかに花の蜜のような甘味を感じるが、シルキーな舌触りとともに、レモンやグレープフルーツのようなシャープな酸味、ミネラル感があり、後味にオーク香と苦み。苦みといっても、雑味のような厭な味ではない。全体的には複雑だが爽やかで、実に美味しい。

シャルドネは、涼しいところは酸味がシャープで柑橘系の香りがし、ミネラル感があり、温暖なところではまろやかでトロピカルフルーツのような香りがすると習った。マトゥアはニュージーランドなので温暖なところだと思うが、味や香りは「涼しいところ」の特徴に近い。樽熟成のものはバニラやナッツの味がすると聞いたが、そういわれればそんな気もしてくる。柑橘系の酸味ばかりを意識していたが、よく味わうと、確かにナッツみたいな風味や、クリーミーな感じもしてくる。やはり言葉を習うと、味に対する感覚も違ってくるようだ。オーク香と苦みが、ナッツの風味やクリーミーな感じに変換されたのかもしれない。

ワインと一緒に食べたのは、四元豚のシルキーポークのハーブロースト、白身魚のカニクリーム包み黄金焼き、サンドウィッチ2種(オムレツタマゴ、サーモントラウト&クリームチーズ柚子風味)、クルミとクリームチーズのポテトサラダ。池袋西武の惣菜売り場で買ったが、一番美味しかったのはポテトサラダだった。

 

大七純米生酛冷やおろし

残暑が厳しいが、季節はもう秋である。柏の高島屋に、ひやおろしがたくさん並んでいた。その中から、福島県二本松市・大七酒造の「大七純米生酛冷やおろし」を選んだ。

製造年月日は2018年9月。精米歩合は69%だが、扁平精米である。扁平精米は齋藤富男氏らが提唱した精米法で、米を細長く削ることによって、削るべきところをきちんと削り、デンプン部分が無駄に削られるのを防ぐというもの。つまり、同じ69%でも、扁平精米だともっと低い精米歩合と同じ美味しさが期待できるのである。アルコール分は15%。ひやおろしなので生詰。火入れは1回なのである程度の新鮮さもあるはずだ。

唎酒をやってみる。まず色を見る。透明にしか思えないが、やや青みがかっている気もする。これは「青冴え」というものなのか。粘性もある。香りは、仄かにヨーグルトのような感じと、かすかに枯葉のような感じ。甘味は抑え気味。まろやかな口当たりで、ジューシー。力強い酸味。この酸味は、生酛の力強さなのか、生詰のフレッシュ感なのか。後味に土のような苦み。この苦みは悪い意味ではない。米の旨味も含んだ苦みだ。かなり余韻が残る。

さて、これで正解なのかは分からない。インターネットで同じ酒の去年や一昨年の紹介文を読んでみる。「洗練された香りと、複雑な旨味が絡み合う奥深い旨味があり、寒さが深まるとともにぐっと旨味を増していきます」などと、「旨味」という言葉が無駄に何度も使われている。日本語としては疑問が残る書き方だ。複雑な旨味というのは分かる。「しっとりと深みのある余韻」というのも、「しっとり」というより「ジワーっ」という感じだが、まあ理解できる。しかし、分からなかったのが、去年や一昨年のこの酒に「キレがいい」という表現を使っている人が、意外にいることである。

「キレ」とは一体、何なのだろうか。普通に考えると、スパッと切れるの「キレ」なので、余韻が少ない、後味が残らないという意味だとしか思えない。スーッと後味がなくなっているような感じである。ところが、大七の純米生酛は、余韻が残る。スパッと切れるどころか、ジワーっと残っているのだが、これがなぜ、「キレがいい」と表現されるのか、分からない。今年の酒だけ違うのだろうか。それとも、「キレがいい」という言葉が、間違って使われているのだろうか。「キレ」とは何か。分からないのに、今まで使っていた気がする。

唎酒の難しさは、酒の味が分かるかどうか、ではない。今、自分が感じている味や香りが、一般的に(というより、日本酒業界で)どのように表現されているのか(どう表現するのが正解とされているのか)が、よく分からないところだ。しかも、醸造年によって味も香りも変わってくるので、これまでの他人の唎酒が判断基準にならない。

一緒に食べたのは、ハーブ鶏ローストチキンパスタサラダ、銀鱈西京焼き、もずく。〆に「おこわ米八」の赤飯、栗、五目の三色おこわ。別に酒に合わせたわけではない。酸味が強いので、味がしっかりとした西京焼きにはよく合った。

 

唎酒師認定試験の例題の間違い

唎酒師のホームページから、認定試験の例題が無料でダウンロードできるようになっている。https://kikisake-shi.jp/exam/example/

これでどのような試験なのか、だいたいが分かる。第1次から4次まであって、1次と2次は選択式が中心。3次はテイスティングをして答える問題、4次はプロモーションが中心。とりあえず、1次と2次をやってみて、躓いてしまった。

問題が難しかったわけではない。解答が間違っているとしか思えない部分があったのだ。

第1次例題の【例題2】(「酒類の分類」に関する問題)は、問題が(1)から(3)の3問しかないのに、解答には(4)がある。

第2次例題の【例題4】(「原料(微生物)」に関する問題)は、(1)が、麹菌について正しい文章を選びなさい、とあり、解答はB:糖分をアルコールに変える働きをする、になっている。しかし、どう考えても正解はA:米のデンプンを糖化させる働きをする、だろう。

問題の番号と解答の番号がずれているのか、と疑ったが、他はすべて解答が正解なので、やはり単に間違っているだけだ。

唎酒師は公的資格ではないが、公式ホームページからダウンロードした例題が間違っていると、資格の価値そのものも下がってしまうような気がして悔しい。問い合わせのフォームがあったので、解答が間違っているので訂正した方がよいのでは、とメールした。翌日にすぐ、大変丁寧な返事をいただいた。間違っていたので訂正しますということだった。ホッとした。例題を見てみると、すでに直っていた。

例題が間違っていたことで、何となく唎酒師を受験する気がなくなってしまっていたが、きちんと対応していただいたので、やはり受験してみようと思い直した。

 

原宿「sora an」

原宿の竹下通りは大人の行く所ではないというイメージがある。通りがいつも人で埋まっている。満員電車のようで居心地が悪い。だが、横道を入ってすぐの通りは、ウソのように落ち着いている。「ブラームスの小径」という名前は趣味がよくないが、蕎麦の「sora an」や中華の「はしづめ」のようないい店が並んでいる。

水曜日の午後6時すぎ、2人で「原宿 sora an(素楽庵)」へ入った。本来、水曜は定休日だが、この日は予約が2件入ったので開けたという。運が良かった。

蕎麦と豚しゃぶがメインだが、お店はカフェ風。最近はこういう店が多い。最初にハートランドビールの中瓶を飲んで、日本酒。福島・会津喜多方の大和川酒造の弥右衛門純米辛口、山形県酒田市・麓井酒造の麓井、青森県弘前市・三浦酒造のモヒカン娘純米、山形県酒田市・酒田酒造の上喜元「こぶし」超辛口特別純米を1合ずつ飲んだ。

弥右衛門は夢の香という酒米を使い、精米歩合は60%。やわらかい甘みと酸味を感じるが、キレもある。後味にほのかな苦み。麓井は瓶を見なかったが、純米本辛だと思う。吟醸香は感じなかったし、やさしい味で、あっさりとしてコクはないが余韻はあった。モヒカン娘は昔、良く飲んだ。優しく穏やかな酒で、酸味はあるけれどまろやかで、後味も爽やか。「こぶし」は日本酒度+10でスパッとしたキレがある。

お通しはエリンギ、オクラ、レンコン。ぶりトロの刺し身、手造り寄せ豆腐、三元豚のメンチカツ、三元豚の無添加ソーセージ、干し山芋のサクサク焼きを食べて、〆は蕎麦。私は豚せいろを、もう1人は胡麻だれせいろを出してもらった。

居心地のよい場所で飲むと、酒もより美味しく感じる。もう少し暑さが和らいだら、ブラームスの小径に面したテラス席で飲みたい。テラス席が心地よい季節は、一年のうちでほんの数週間しかない。その貴重な時間を味わいたい。